2005年にデビューし、映画やドラマ、舞台の数々の名作に出演。今年は劇場版「ROOKIES―卒業―」が大ヒットするなど大活躍の小出恵介さん。10月31日公開の最新作「風が強く吹いている」では、“箱根駅伝”を目指す10人の大学生のリーダー役を熱演している。今週のenvy(エンビー)は、そんな小出恵介さんをインタビュー。最新作に懸ける想いや、俳優としての今後、そして、恋愛観などについて聞いた。
“走る”才能をもった2人の若者が出会った。致命的な故障でエリート・ランナーへの道を諦めたハイジと、事件を起こし競技から遠ざかった天才走者カケルだ。ハイジはカケルこそが、秘かに温めていた計画の切り札だと確信、壮大な夢への第一歩を踏み出す。それは、同じ寮「竹青荘」で共同生活を送る8人のメンバーと、学生長距離界最大の華といわれる「箱根駅伝」出場を目指すこと。ところが8人は、漫画オタクや25歳の留年生、アフリカから来た留学生など、ユニークだけど陸上からは縁遠いキャラばかり。それでも、なぜかハイジは、自信に充ち溢れていた。彼のあみ出す緻密なトレーニング法と“走る”ことへの信念、仲間への揺るぎない信頼が、やがてみんなを変えていく。 “走る”という行為だけで観る者の胸をこれほどまでに熱くするのは、欠点だらけのフツーの若者たち。昨日までは夢も目的もなく生きていたが彼らが、仲間と固い絆を結ぶ喜びと、夢を追いかける充実感を知り、自らの限界に挑んでいく。この不安な時代に呑み込まれることなく生きちることを実感するため、「新しい何かを始める」。そんな勇気と希望を与えてくれるパワームービーだ。 |
――初めて脚本を読んだときの感想を。 小出恵介:のらりくらり暮らしていた大学生がいきなり“箱根駅伝”に出場するなんて無茶苦茶だなと……。でも、観た人が劇中の僕らと一緒に一喜一憂できる、そんな感動を届けなければと思いました。 ――みんなから愛されるハイジは、ハマり役でしたね。 小出恵介:ハイジは、僕から見たらあり得ないくらいデキる男。実際の僕にはないとこだらけで(笑)。でも、ハイジに成りきるという思いだけは常に持ち続けて演じました。 ――ランナーを演じるに当たって苦労されたことは? 小出恵介:体作りですね。実際に体つきが分かるユニフォームを着るのでごまかせない。だから本格的な筋トレやランニングを真剣にやりました。やればやるほど体つきが変わって、独特のフォームもできてきて、体重は3~4キロ落ちましたが、後半はストイックになることを楽しんでいました(笑) ――撮影で辛かったことは? 小出恵介:冬の撮影だったので、毎日寒くて時には朝の6時にあのユニフォームになって走るというのが大変でした。本番が終わるとすぐに体が冷えてしまうので、次の本番までにまた体を温める、この繰り返しが辛かったです。 ――男性ばかりの撮影現場はいかがでしたか? 小出恵介:「ROOKIES」のときも感じたけれど、男が集まって話すと変な話ばかりでした(笑)。でも、あいつが頑張っているから俺も頑張ろうとか、そんな絆が生まれて、パワーをもらいましたね。
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――今作に登場する10人の中で、ご自身に似ている、また、好きなキャラクターを教えてください。
小出恵介:似ているという意味ではニコチャンが7割、ユキが3割かな。好きなのはキングですね。自分が1番できないという意識が強くて、お荷物なんじゃないかなと思いながらも頑張るところは応援したくなります。
――応援といえば、ハイジは良き指導者としても活躍しますね。
小出恵介:客観的にみて僕もそう思います。1人ひとりに対して接し方が違うし、決して否定せず切り捨てないし、良いところを伸ばしたり、みんなのテンションを上げるのも上手い。
――そんな指導者が実在したら?
小出恵介:僕は厳しく言われた方が安心するタイプ。優しいのもいいと思いますが、返って不安になるんですよね。Mなんでしょうね、恐らく(笑)。
――“箱根駅伝”を見る目が変わるのでは?
小出恵介:変わりますね。某大学の合宿にお邪魔したのですが、やっぱり僕が想像していたより何倍も走ることに懸けている。改めて「かっこいいな」って思いました。
――今作の見どころを。
小出恵介:チームや家族のことなど、いろいろ背負って走る男たちの美しさが伝わる作品です。10人がお互いの命を分かち合うっていうか。でも、走ることそのものを生きがいにしているわけではなく、それぞれ違うものを目指していて、人生の中の大きな一歩を踏み出すために走っている。そこが素敵ですよね。
――ズバリ何フェチですか? 小出恵介:うなじかな。普段は髪を下ろしている女性が何かの拍子にフッと髪を上げた瞬間に見えるうなじに、オッと思いますね(笑)。 ――理想の恋愛ですか? 小出恵介:恋愛に依存するというよりは、お互いに自立している方がわりと好きですね。依存し合うと視野が狭くなると思うんですよ。 ――自由主義? 小出恵介:そうですね。あまり束縛はしたくないし、されたくもない。お互いが違う景色を見ていて、会った時にそれを共有するのが理想かな。 ――俳優として憧れている方は? 小出恵介:緒形拳さんにすごく憧れていました。大好きで、残念ながらご一緒させていただいたことはありませんでしたが、本当にお会いしてみたかった役者さんです。 ――緒形さんのどこに魅力を? 小出恵介:作品を全て拝見して、なんかこう、命を刻み込んでいるように感じ取れる、文字通り迫真の演技。そういう姿がすごく魅力的で、影響を受けました。 ――女優さんは? 小出恵介:樋口可南子さんが好きです。単純に大好きなんです。 |
――今作では“走る”ことに懸ける役を演じられましたが、小出さん自身が情熱を傾けることは? 小出恵介:芝居だと思います。それ以外、特に何かをやるってことはないですね。続けることが難しい世界だと思うので、とにかく10年とか、その先も続けていきたい。 ――くじけそうなときには? 小出恵介:色んな人の言葉に励まされたり、パワーをもらうことはあっても、最後のボタンを押すのは自分。結局は自分で自分に言い聞かせるしかないと思います。 ――今後、スポーツがテーマの作品に出演されるとしたら、どんな競技がいいですか? 小出恵介:学生時代にやっていたので、バスケットの作品に出演させていただけたらいいなと思います。得意なので(笑)。 ――次はどんな作品に挑戦してみたい? 小出恵介:大人のラブストーリーかな。本当に本当にしばらくの間、ラブストーリーに出ていないので……(笑)。 ――ありがとうございました。 |
1984年東京生まれ。2005年に日本テレビ系ドラマ「ごくせん」で俳優デビュー。同年の「パッチギ!」をはじめ、「初恋」(06年)、「キサラギ」(07年)、「きみにしか聞こえない」(07年)、「僕の彼女はサイボーグ」(08年)といった映画、フジテレビ系「のだめカンタービレ」(06年)、TBS系「ROOKIES」(08年)など人気テレビ番組に出演。「ROOKIES」は劇場版が今年公開され話題となった。今後は、行定勲監督の「パレード」(10年春公開予定)などに出演する。いま最も注目を集める若手俳優の1人。 |
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撮影:笹野忠和(BLiX)