今やアジアを代表する世界的女優の1人となった小雪さん。10月31日に公開される、森田芳光監督13年ぶりの完全オリジナル映画「わたし出すわ」では、初の単独主演を飾り、謎めいた女性主人公が“明日の幸せ”を見出すまでを演じ切りました。そんな小雪さんに、この映画への想いや見所などを聞きました。

![]() ――「わたし出すわ」というタイトルを聞いてどう思いましたか? 小雪:とても新鮮でしたね。「何を出すのか」、「どういう内容なのか」という2つの興味が湧きました。印象に残るし、これまでありそうでない、いいタイトルだなと思いました。 ――意外にも初めての単独主演作品。オファーを受けたきっかけは? 小雪:監督のこれまでの作品を観させていただいて、とても思慮深く情熱がある方だと思っていました。実際、初めてお会いしたときもそう感じたし、出演を決めたのは監督の情熱を直接感じたことが大きかったですね。 ――実際に仕事をされてみての森田芳光監督の印象は? 小雪:心の中に熱いものを秘めている方だと思います。いろいろな引き出しがあって、たくさんの自分を持っている。少年のようである一方で、とても大人びた面もあって魅力的な人でした。 ――今回、初共演の方が多いですよね。 小雪:みんなそれぞれ個性的で持ち合わせているものが違って楽しかったですね。エネルギーをもらったり、刺激を与えてくれる女優さんばかりで濃厚な時間でした。特に黒谷(友香)さんは、もともとモデルをされていたので昔から知っていたのですが、なかなか機会に恵まれず、今回初めてご一緒できて、すごく嬉しかった。 ![]() ――役づくりで苦労されたことは? 小雪:脚本に説明が少なかったので、監督に相談しながら役を作っていかなければと、撮影に入る前は正直とても不安でした。世俗に染まらず、物欲もなく、現代社会に生きる人と交わりにくい摩耶のようなキャラクターに、どうやってリアリティを持たせるか、悩み、試行錯誤しました。 ――悩んだり試行錯誤して答えは出ましたか? 小雪:あまり答えを決めないことが、摩耶というキャラクター作りでは大事だなと。今回の撮影は函館ロケ。その土地で高校時代を送り、生活した人にしか出せない空気感みたいなものをスクリーンを通して表現できたら、スパイスになるんじゃないかと考えながら演じました。 ――函館はいかがでしたか? 小雪:はじめはどんなところなのか知らなかったのですが、今は函館が本当に好きになりました。旅行でまた行こうと思っています。地元の人がとても温かくて、人と人との距離感のバランスもいい。その土地を愛しているというのもすごく感じましたね。 ――函館で1番好きな場所は? 小雪:劇中でマラソンをしている大沼の周辺が素敵でした。大自然を満喫できるし、少し離れたところには、ご飯屋さんもたくさんあって、短時間の移動であんなにたくさんの自然の中に身を置けるのは凄いと思う。今でもすごく印象に残っています。 |
![]() ![]() 山吹摩耶(小雪)が故郷に帰ってきた。東京でどう稼いだのか、彼女は莫大な財を築いていた。高校卒業以来、何も変わっていない街で、久しぶりに高校の同級生たちと再会する摩耶。そして、彼らの「夢」や「希望」を実現するために、惜しげもなく次々と自分のお金を差し出す。「わたし出すわ」と……。そんな摩耶に友人たちは戸惑いながらも、ついついお金を受け取ってしまう。果たして摩耶のお金の出所は? 彼女の目的とは? そして、大金を受け取った友人たちの夢の行く末は? 「わたし出すわ」のその先に、それぞれの「未来」が見えてくる――。サブプライムローンに端を発した金融破綻による世界的経済不況が長引くなか、本来ならば“ツール”であるはずのお金が、いつの間にか人生の目的になっている。そんな時代を生きる私たちに、この作品は「明日の幸せのつかみ方」のヒントを与えてくれる。 この作品では、あるブラックマネーで莫大なお金を手にした女性のお金の使い方に焦点をあてた。経済が人の生活を大きく左右している現在、お金の使い方が不条理に感じられる今だからこそ、僕はこの話が必要だと思った。 森田芳光 |

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![]() ――完成した作品を観ての感想を。 小雪:これまで出演作を客観的に観られないことが多く、「ああすれば良かった」、「こうすれば良かった」と、欠点や課題に目がいってしまいがちでしたが、今回はストーリーを観ることができました。本当に面白かったです。 ――小雪さんが好きなシーンは? 小雪:いろいろなことがあった麻耶が、他愛もなくただただ土手を歩くだけのシーンはすごく情緒があって好きです。あのシーンの雰囲気は作品の本質的なテイストを醸し出している気がして、素敵だなって感じました。 ――作品を観て、摩耶に共感する部分はありましたか? 小雪:共感というより「摩耶は幸せを見出せて良かった」と安心しました。孤独と共存して生きていく、それが人生だと思います。そのこととどう向き合っていくかというと……ただひたすら一生懸命生きるしかないのですよね。摩耶の信念やお金の使い方は、「今」につながっている、そう思えたことで、気持ちがすごく豊かになれた気がします。 ――最後に映画の見どころを 小雪:私自身もそうでしたが、観た後に「わたし出すわ」という面白いタイトルに期待する以上のものを感じ取れる作品だと思います。みなさんがお金の使い方を考えるきっかけになったり、本当に大切なものや、生きる指針を発見するヒントになれば嬉しいですね。 ――ありがとうございました。 1976年神奈川県生まれ。モデルとして活動する中、98年にフジテレビ系ドラマ「恋はあせらず」で女優デビュー。映画初出演は2000年、堤幸彦監督の「ケイゾク/映画 Beautiful Dreamer」。その後、数々のドラマや映画、舞台、CMなどに出演し、03年にはトム・クルーズ主演のハリウッド映画「ラスト・サムライ」で世界的女優へ。04年に、蜷川幸雄監督の「嗤う伊右衛門」で日刊スポーツ映画大賞主演女優賞や、日本映画テレビプロデューサー協会が選定するエランドール賞新人賞、第12回橋田賞橋田新人賞を獲得。06年には「ALWAYS 三丁目の夕日」で日本アカデミー賞優秀主演女優賞を受賞した。09年は、「ラスト・ブラッド」に続き、「カムイ外伝」、そして、「わたし出すわ」と、出演映画が連続公開される。今後は、平山秀幸監督による主演作「信さん」が10年に公開予定。日本が世界に誇るトップ女優のひとりとして活躍し続けている。 |